つるちゃんからの手紙12月号(令和5年12月号)
2年前の夏、建物の大工事をしてメンテナンスフロアを増築しました。4台の診療チェアーを増床しました。おかげでこれまで以上に多くの患者さんのケアに力を入れることができるようになりました。これは大変良かったことなのですが、あることに気が付きました。
私の医院で定期健診においでになる患者さんの多くが数か月に一回、60分の予約時間を確保しております。年に4回メンテンスにおいでになって、医院で行うプロケアは4時間。では患者さんが自ら口腔ケアに使う時間はどれくらいなのでしょうか。
毎食後に行うブラッシングを3分間として、これを365日続けるとそれは3,285分。これを換算すると55時間/年。すごい時間ですね。ですから、ホームケアがとても大事なのですね。口腔ケア、予防歯科は誰が行うのか。それは歯医者さんだけではなく、患者さん自身が、自分のために行うものなのです。それをちゃんと教えてあげないといけないと思ったのです。患者さんから「私におすすめの歯ブラシは?子供におすすめの歯磨き粉は?」と訊かれたとき、私たちは本当にその人にとって合うものを選んであげないといけないといけません。「歯科医院にいる時ではなく家にいる時の患者さんの口腔ケアを考える」。そのことが大事なことだと気が付いたのです。
歯科医院を訪れる患者さんのお口の状態は千差万別。だから同じ歯ブラシ、同じケアグッズというわけにはいかないのです。
具体的には子供からご高齢の方まで、歯・歯ぐきの特徴は全く違う。虫歯リスクが高い人、そうでない人。歯周病が軽い人、中等度の人、重度の人。義歯を使っている人やインプラントを埋入している人や矯正中の人。妊娠中の人、持病を持っている人。唾液が多い人、乾燥している人。比較的、時間がある人から、夜勤などもあって歯磨きする時間がないほど忙しい人。疾病だけでなく、それぞれの生活習慣やライフステージにおいて、口腔ケアグッズは全く異なってくるのです。
口腔の専門家である私たちが患者さんの口腔内の状態を正確に把握しているのに、治療やメンテナンスだけで踏みとどまっていてはいけないと考えます。
私達が、一人ひとりに適切な口腔ケアグッズを選択し、そのケアグッズである理由と使い方を教えてあげることまでが、本当の予防歯科と言えるのではないではないのか。適切な口腔ケアグッズを「処方する」。そういったレベルにならないといけないと感じました。
昨年から歯科衛生士チーフの横山さんが中心となり医療物販学という学問分野について、1年以上学んできました。
特にこの1年間は、外来診療でのメンテナンスにおいては安心して通っていただくために、徹底的に気持ちよく、それぞれに合わせたブラッシングをこころがけること、さらに口腔ケアグッズの適正使用において試行錯誤を重ねてきました。年間を通じてセミナーに参加したり、患者さんの声を参考にしたり、スタッフ間で学びを深め、準備を進めていきました。
そして、とうとう待合室をリニューアルする運びになりました。今回は販売用の棚を二つ新調し、大規模に改装を行いました。
それにはこんな思いがありました。少しぐらいケアグッズを並べていてもしょうがない。できれば患者さんに待合室で口腔ケアグッズを手に取ってもらい、「こんなケアグッズがあったんだ。これ使ってみたい!」とワクワクしてほしい。そのグッズの正しい使い方を知って欲しい。
だから、ただ売れるかもしれないものを陳列するのではなく、自分たちも使ってみて本当に良かったものだけを選んで院内に置くことにしました。
私たちは通っていただける方々がいつまでも歯と歯並びがきれいで健康で若々しい人であってほしいと切に願っています。自分のお気に入りの歯ブラシ、歯磨剤、洗口液、歯間ブラシ、タフトブラシ、フロスを使用するとき、あの歯医者さんに通っていて良かったな、すすめてくれた歯科衛生士さんや受付スタッフの顔を思い出してもらえる、そんな予防歯科が実践できたらいいなと思っています。
最後になりますが、大過なく2023年を過ごすことができました。新しく入ってきてくれたスタッフがいて、結婚したスタッフがいて、出産したスタッフがいて、幸せなことがたくさんあった一年間でした。多くの地域の人の歯科治療に関わらせていただきました。来年もまた、いい一年を過ごせるように、健康に気を付け、気を引き締めて前進したいと思います。今年もありがとうございました。よい新年をお迎えください。 拝