つるちゃんからの手紙4月号(令和5年4月号)
 

春になりました。私の住む地域ではこの季節になると桜が川沿いに咲き乱れます。仲間や友人からは「ここで桜を見る会をやろう!」(いわゆる花見という飲み会)と言われるのですが、残念ながら4月は特に忙しい。花見をしている暇もないくらいに。神戸に講演に行ったと思ったら、次男の入学式に出席するため北九州へ。帰ってきたと思ったら次は札幌で発表。その後は福岡でインプラント研究会。その間にWEBセミナーを2本消化。忙しいのですが、私が楽しみにしているのが、新入社員の教育です。

毎年のことですが、私は新入社員に言います。自分たちの行う仕事は「良き仕事」を残すこと。英語では“Good job!”といいます。

私たち歯科医師の仕事はパノラマというエックス線写真を診れば、どこにどんな疾患があるのか一目瞭然です。場合によっては、過去にどんな治療をその患者さんが受けてきたかもわかります。

虫歯があるのかないのか。歯周病が進んでいるところ、そうでないところ。神経がある歯なのか、無いのか。何度も治療を繰り返したところ。詰め物やかぶせ物が適合しているか、そうでないか。歯は無いのだけれどその部分の骨の透過像を診る事で、抜かれる前はどんな状態であったのか。症状は全くないけれど、なにかの折に腫れるだろうなと、などと予測まで、できるのです。

もちろん、患者さんにそのことをお伝えし、歯科治療を行っていくのですが、私の言う「良き仕事」とは技術だけの話ではありません。形に残らないものも含むのです。

患者さんが初めて歯科医院を訪れた時、不安なのです。歯が悪いとわかっていながらも、放置し、いよいよこれではダメだと意を決して歯科医院を訪れる人も少なくありません。もしかしたら、叱られる覚悟をしているかもしれません。そんなに患者さんに声をどうかけるか。

これまで、その人が歯医者に行かないといけないのにどうして行くことができなかったのか、その背景を知ることが私は大切だと思っています。私の場合は、高校3年生の時に一本の奥歯をなんの説明もなく、無断で抜歯された経験があります。その時のみじめな気持ちは今も忘れていません。だから、たとえどんなに口の中の状態が悪くても、私はその患者さんの心を大事にしてほしいのです。

「これまで大変でしたね」「これからまた良く噛めるように、一緒にがんばりましょう」、「大丈夫ですよ。安心してください」と言えるかどうかなのです。

治療を気持ちよく受けていただくこと、心に残る歯科治療を行うことも「良き仕事」といえるのではないかと私は思うのです。

若い歯科医師や歯科衛生士は、ことに技術に目が行きがちです。実は私もそうでした。早くなんでも治療ができるようになりたい、早く人の役に立ちたいと。

しかし、私は何も難しい症例に果敢に挑めとは言いません。患者さんの話をしっかりと聴ききること、エックス線写真や口腔内写真を患者さんが見てもすぐに理解できるようにキレイに撮影すること。局所麻酔は痛くなく行うこと。治療の時は口腔内をやさしく触れること。それは技術のあるなしではなく、心構えの問題です。私がいままで出会った名医と呼ばれる歯科医師はすべてこの精神を長年にわたって貫いてきた方ばかりです。

「良き仕事」を行うとかならずまた、次の「仕事」という報酬が与えられ、その人は内面から輝くことができる。それが本物のプロになることだと教えています。今年は歯科医師、歯科衛生士、2名が入社しました。どうぞ、よろしくお願い致します。また、4月は私が不在の日も多く、アポイントが入りにくくご迷惑をおかけするかと思いますが何卒ご容赦ください。