つるちゃんからの手紙11月号(令和2年11月号)
 

私の医院では月に1回、全体ミーティングを行っています。今月は「1年プレゼン」を行いました。今日はこの「1年プレゼン」についてお話しします。

毎年4月になると新入社員が入ってくるのですが、当院での定める新人の期間は1か年です。仕事における新しいものを学ぶ時期に充てます。

歯科医院の仕事というのは、とにかく複雑で、覚えることがたくさんあります。たとえ大学や専門学校で知識を頭に完全に叩き込んだとしても、実際の臨床現場はまるで違います。

虫歯・歯周病の治療、抜歯や型取りでも、医療行為を行う前には驚くほどのチェック項目があり、深く理解しておかないとうまくいきません。

1本の虫歯も症状の問診、全身の既往歴、服薬歴からはじまり、視診、打診、エックス線写真診断、治療の予後を予測し、患者様にコンサルテーションを行い、そして治療です。治療中でも虫歯の深さや広がりによっては、歯の神経の治療に移行することもありますし、最後は歯科医師の裁量によって治療が勧められていきますが、私たちは手を動かしながらも、常に頭の中では、患者様にとってのベストを考えています。私はよく「臨床とは決断の連続である」と語っています。

このように歯科治療は複雑なので、新人は焦ります。なにがなんだかわからず混乱します。混乱すると、思うように動けなくなります。うっかり物を落してこわす、要領が悪く時間をロスしてしまうことも多くあります。どんなに頑張っても空回り。家に帰ると、疲れがどっと出て、朝まで眠ってしまったという人だっています。でも、それが新人なのです。がむしゃらになるのが新人、悔しい思いをするのが新人。落ち込むのが新人。

だから医院の誰もが新人を助けます。何もできない新人を放っておくなんて、もってのほかです。私も含め、どんなベテランのスタッフでもそういった時代は必ずあったはずです。周り手助けがあったから、乗り越えることができたのです。新人期間は、ベテランスタッフは時間を割いて新人スタッフに仕事の内容を指導し、トレーニングに付き合います。

そして、1年が経って、たくさんの経験を積んで、今日から新人ではありませんよ、というのが「1年プレゼン」。今回は2人のスタッフが発表しました。いい仕事(技術)を身に着けるには、知識、経験、時間、そして情熱が必要です。今はなんでも便利な世の中です。コンピューターを使って、スマホを使って、なんでも簡単に短時間にできる時代になってきましたが、人が行う仕事においては、やはり「慣れ」や「経験」だけではなく、「鍛錬」が必要であると思っています。その新人期間の1年が経つとそこで、自分がこの1年間どんな気持ちで仕事に向き合うことができたのか、なににやりがいを見つけたか、そしてこれからはどうなりたいかを発表します。他にも、自分がなぜ、ここに就職したのか、実際に入ってみてどうだったのか、この1年間、どんな思いで、仕事を続けてきたのか。院長や主任、先輩への感謝の気持ちと、同期と一緒に力を合わせて頑張ってきたこと、楽しかったこと、悩んだことなどを話してくれます。新人期間をやり切って先輩たちや患者様が自分を頼りにしてくれるようになったことが自信につながったことを聴くととてもうれしくなります。そうやって、次に入ってくる新人のお手本になることができるのです。

2人とも堂々とした立派な発表をしてくれて、私は感動で涙が込み上げてきました。

「1年プレゼン」は、言ってみれば鶴田歯科医院での成人式を指すのです。スタッフ一人一人が医院の宝です。全員の力あってこそ良質な歯科医療が実現できると私思っています。