つるちゃんからの手紙10月号(令和2年10月号)
 

採用の時期がやってきました。いつもなら6月くらいから採用試験が始まるのですが、今年は新型コロナ感染症拡大の影響で、9月からと例年より遅い段階で面接試験がはじまっています。

開業したころは、新規ということで、多くの求職がありました。患者様が増えてきたので、外来診療はとても忙しくなり、何とかして医院にふさわしい人を採用したい、そう思っていました。しかし、ジャージにサンダル、携帯電話をそのまま片手にもったまま、という身だしなみで採用試験においでになられると、さすがに採用をためらってしまいます。また、服装は整っていて、挨拶も感じ良く、元気はいいのですが、話を掘り下げていくと話の内容がちぐはぐで、この医院の名前を間違えるし、ホームページにすら目を通していない方もおられました。私は極力過去の肩書や、履歴書に書いてあることは見ないで、その人の持つ、やさしさや、思いやりなどを引き出すよう心がけています。決して、人手が足りないからと次々に人を入れるということはできませんでした。

採用試験で大事なことは、社会人になる心構えができているかということを主に見ています。学生ではなく社会の一員になる自覚があるかどうか、その人が面接試験という改まった場で適切な言葉使いができるか、話の内容が幼稚すぎないか、などという基本的なことが、できていないといけません。どんなに感じのいい人であっても「それマジっすか!」、などという言葉遣いをしていては、こんな調子で先輩や患者様に接するのかと思ってしまいます。しかし、開業してある時期から、不思議といい人ばかり面接試験を受けてくれるようになってきたのです。たとえ緊張していたとしても、初対面の目上の人に対して笑顔でしっかりと眼をみて話すことができるのです。「ああー、この人と一緒に働きたいなあ」と感じたら、私の悪い癖で、つい自分のことを語り始めてしまいます。

なぜ、自分が歯医者になったのか、なぜ、ここに開業しようと思ったのか、自分の仕事の目的が、お金や生活のためではなく、本当に人生をかけてでもやりたいことがあって、それを実現するためであることを熱弁してしまうのです。

「たとえ地方であっても世界水準の医療技術を持つ歯科医院」「楽しみに次のアポイントを待つような歯科医院」「地域の人が、ここに鶴田歯科医院があって本当によかった、と思ってもらえるような歯科医院」、そんな歯科医院を創っていくんだよ!と話をします。

すると相手の眼が輝いてきて、頭の中のスイッチがバチバチと入る音がきこえてくることだってあります。そうなるとさらに熱くなるので、さすがに周りの人が、「院長、もう時間ですよ、(続きは入社してからのほうが‥‥)」と止めてくれます。(笑)

面接が終わると、受験した人もほっとするのでしょうが、そこでも礼儀正しく「院長先生、今日は貴重なお時間をいただきありがとうございました」と言ってしっかりと頭を下げることができる人であれば、すぐに採用決定通知書にサインすることにしています。

仕事をしてお給料をもらうと、とてもうれしいものです。しかし、仕事における報酬は金銭だけはなく、仕事を通して新たな知識を得ることだと言えます。患者様の対話から学び、ある時は難症例に対峙して必死で考え、良き仕事をするために工夫と知恵を絞ります。努力して、仕事が達成できれば人から「信用」というお金で買えない喜びを手にすることだってできます。

仕事は人生で多くのことをもたらしてくれるものです。

ありがたいことに令和3年4月の新規採用は歯科医師、歯科衛生士、歯科技工士、奨学金受給生を含め7人の内定が決まりました。5人が県外から、2人が県内出身者です。来春から彼らと一緒に働くことを考えると、ワクワクしてしまいます。