つるちゃんからの手紙11月号(令和5年11月号)
 

時々、スターバックスに行きます。私はコーヒー通というわけではありませんが、あの落ち着いたお店の雰囲気の中で、活き活きと働くスタッフの声を聴いているだけでなぜか元気になれます。せっかちで行列が嫌いな私でさえ、レジの前の列に並ぶのも苦になりません。なにかそこには満ち溢れたエネルギーを感じるからなのです。おそらく、あのスタッフの一人ひとりはお客さんそれぞれが喜んでくれることが生きがいであり、仕事のやりがいを感じていることだと思うのです。それが自然と出ているのが素晴らしいと思うのです。そこで飲むコーヒーはどれを選んでも美味しいと感じるものです。一杯一杯に心がこもっていることを実感できるからです。

北海道にある六花亭というお菓子屋さんもそうです。マルセイバターサンドは私の大好物なので、たまにネットで取り寄せるくらいです。何度か、帯広にある六花亭に行ったことがあるのですが、そこの店員さんの対応もまた素晴らしい。マルセイバターサンド以外にもたくさんのお菓子が販売されているのですが、どれがどんなお菓子なのか、店員さんが笑顔で詳しく説明してくれるのです。多く売ろうなどという下心などは微塵にも感じません。むしろ自分の仕事を誇りに思っていることが伝わってくるのです。とにかく行けばわかります。本当に見事な対応なのです。私なんか単純なので、気が付けば、あれもこれもとカゴの中は商品でいっぱいになっているのです。たとえ財布が軽くなったとしてもいい買い物ができたと満足なのです。北海道のお土産はここだけで十分、と思ってしまうのです。こうして私はその店のファンの一人になってしまうのです。さすがに帯広は遠いのでしょっちゅう行くわけにはいきませんが、ネットでマルセイバターサンドを注文する時に、あの店員さんの素敵な笑顔を思い出してしまいます。

この六花亭のことが本に書いてありました。創業者の小田豊四郎さんは「店員教育というのは店の繁盛のための手段ではありません。若い人の将来のために店主が行わないといけないのです」と言ったそうなのです。すごい!私はしびれました。

この二つのお店に共通するのは、働く誰もが良いふるまいをするということ、そして商品の質が高いという事だと私は思うのです。このどちらかが欠けたら、決して繁栄はしないと思うのです。私の仕事では技術。まず人の苦痛や不安を取り除くことができる力が必要。国家資格を得たとしても胡坐をかいていてはいけません。研修会やセミナー、症例検討会や学会に出席し知見を広め、指先を鍛える。スキルを身に付けるには経験を積むことが必要。遊んでいる暇なんてプロの世界にはありません。カレンダーはいつも「真っ黒」が当たり前なのです。スタッフ教育においてはどうでしょうか。実は、うちには大したマニュアルや動画研修というものもありませんし、マナーインストラクターや経営コンサルタントもおりません。大事なことは一人ひとりが後輩に向かって、しっかりと教えていくことだと私は思っているのです。先輩みたいになりたい、と後輩が思ってもらえるような技術を磨くこと、良い行動をとることが一番だとおもっています。そして、愛情をもって育てる。後輩がその仕事ができるようになるまで何度も何度も向き合う。決して一人にさせない。これは今の時代には非効率なことかもしれませんが、技術を得るためには時間とエネルギーは必要なのです。手塩に掛けて育てる。するといい表情をもった人が育ちます。そうして一人前になったスタッフが、次の後輩にも同じように育てていくことがとても大事だと思うのです。

「店は客のためにある 店員と共に栄え 店主と共に滅びる」(倉本長治)これは私の座右の銘です。「医院は人のためにある スタッフと共に成長し 心がなくなると滅びる」と心に決めて、日々診療しています。