つるちゃんからの手紙11月号(令和4年11月号)
 

先日、「歯科医院経営は人創り」というテーマで、歯科医療従事者向けに講演をさせていただきました。自分がこれまでの間、どのように歯科医院を経営してきたのか、自分を含め、各リーダーの働きや、スタッフ一人ひとりの持つ力を引き出すことを中心に話をしました。
私は開業してから決して順風満帆であったわけではなく、診療以外のことでは、苦労もしてきました。お互いの気持ちがつかめなかったり、誤解が生じたりすることなどは、働く人が増えれば、そういったことは必然的に起こることです。
そうならないためにも、リーダーが仕事への思いを伝える力を高めることが最も大事なことだと思います。
コミュニケーションの原点は自分の気持ちや考えていることを相手に正確にわかってもらうことです。具体的には、「言葉は極力短く」「わかりやすく」「繰り返す」、また相手の表情をしっかりと観察する、心情を察する、そういったことにも注意が必要です。

ただ、私がまだ若く未熟なころは、正しいことを何度も繰り返し伝えるのですが、一向にうまく伝わらないということが多々ありました。今になってみて、それがなぜだったかわかります。
たとえ、そのメッセージの内容がどんなに正しくても、どんなに良い事であっても、リーダーが尊敬されていないと、誰もついてきません。なにを言っても無駄です。どうしたら、いいのでしょうか。
それは相手の心をよく理解することです。理解するだけではなく、その人が働きやすい状態にしてあげることです。つまり仕事にたいしてやりがいをもってもらうことです。
やりがいを持ってもらうためには、「役に立っている」「感謝される」「仕事の成果を果たした時」などが挙げられますが、私はやはり「任せてもらった時」が一番ではないかと思うのです。
そのために、仕事の中で大事なことをまとめ、一人ずつ向き合って教え、何度も繰り返し練習につきあいました。そこまですると、お互いの信頼関係が生まれるというのでしょうか、私は「この人だったら大丈夫」、本人も「ここまでしっかり準備したから大丈夫」、「院長の期待に応えたい」という気持ちが生まれます。
反対に自分の行う仕事に不安があると、人の表情は暗くなります。だから準備だけは圧倒的な量を行うのです。そうしたら、任せることができるのです。「どうやったら部下(スタッフ)が積極的に動いてくれるでしょうか、と質問が一番多いのも事実。私は答えます。「相手に言う事を聴いてもらえる自分になることです」、「何を言うか」より「誰がいうか」ということがすべてなのです。これは私の師匠である大久保寛司先生から習ったことです。「よくわからないけれど、この人が言うのだから、まずやってみよう」と部下が思うかです。
反対に「言っていることは大事なことだけど、この人が言うことはやりたくない」と心の中で思われないようにすることです。要は人と人とのかかわりですから、普段は仕事の話だけではなく雑談を大事にすること、スタッフの小さな変化に気が付いてあげる。そして、院長室のドアはいつでも開けておくこと。(スタッフがいつ、何を相談しにきてもいいようにしておくという意味)間違っても、今忙しいから後でなどという態度をとってはいけません。
いつだって聴く姿勢、そして遮らずに最後までしっかりと聴きとること、それが大事です。リーダーはいかなる時も自分たちを守ってくれる存在でいて欲しい、そうスタッフは思っています。