つるちゃんからの手紙 4月号(平成31年4月号)
 

 最近思うのは、自分が幸せかどうかは、朝起きる時間できまるということです。私は大体朝の5時には目が覚めます。これは、若い時からそうでした。

 早く目が覚めた時の気持ちがなんともいえないワクワクする気持ちになっているのです。始業時間よりずいぶん前に医院へ出勤して、自分しかできない仕事に没頭する時間が好きなのです。まず、メールをチェックします。メールを読むと、すぐに返事を書きます。それはエチケットやマナーではなく、単に朝は頭がさえているから、すぐに書き終えることができます。

 それが終わると、インプラント治療の症例プレゼンをまとめます。私は、必ず患者様の歯科治療の記録はなるべく画像で残すことにしています。それは治療記録だけにとどまらず、今後のより良い治療へと役立てるためにも大事なことなのです。

 手術の前から、手術中、術後の創部の治癒の状態まで、時間を追って画像で残すことにしています。それを見直すことが一番の学びと改善、そして進化になるのです。このように学びを得ることができるのが、私の朝の大切な時間なのです。

 

 ついこの前、ある勉強会でインプラント治療の講師を頼まれました。

 もちろん二つ返事でOKしたのですが、その主催者から、「鶴田先生のプロフィールを書きたいので、今ある肩書はすべて教えてください、例えば○○学会の認定医とか・・・」と言われました。実は現在ある学会の専門医の資格を取ろうと思い昨年、認定講習会を受講しました。症例の数や、学会出席の単位などの取得はほぼ条件は達成しているのですが、学会認定施設の在籍期間が短かったので、少なくともあと3年は時間がかかるのです。そこで、「私には肩書はありません。雲仙市開業と記してください。」と言いました。すると、いや、なんでもいいのです。多いと助かります。聴きにくる先生たちは期待されているのです、とまで言われました。しかし、私が誇れることは雲仙市で開業しているということだけなのです。そう言うと、主催者はちょっと残念そうでした。

 

 その数日後、私の医院にあるインプラントメーカーの担当者がおいでになりました。

来年度に福岡に研修センターを設立することになったので、そのコースの講師をしてもらえないでしょうか、と。とても驚きました。まさか私にそんな話がくるとは全く思っていなかったからです。メーカーは誰がどれくらいの症例をこなしているかは出荷するインプラントの絶対数を知っています。また、インプラントを埋入し、長期的にトラブルが無く、しっかりと噛めるようになるまでには、高い品質のパーツを多く使いこなさないといけません。「自分はインプラント治療の経験が豊富である」と言っても、それを数として証明できるのはメーカー以外には存在しないのです。

 そのメーカー公認のアドバイザーとなるわけですから、これはとても名誉なことだと私は思いました。

 

 地域の人が生涯にわたって、豊かで健康的な人生を送ってもらえるような口腔環境を提供するのが私の仕事です。したがって、肩書きを求めるための勉強をするということは、私の医院に学びに来る若い歯科医師にはすすめていません。論文・専門書を読む、セミナーや学会に出席して得た知識や能力を、人のために使いこなせること、それが大事だと思っています。純粋に「人のため」「自分を磨くため」「世の中のため」にエネルギーを使ってほしいのです。偉くなることなんて考えもしないから、本当にいい仕事ができるのではないかと私は思っています。講師を頼まれた勉強会の案内はすでに刷り上がっているようですが、私のプロフィールは「雲仙市開業」と記されています。私はこれが一番の肩書だと思っています。私にしかできない、自分らしい講演をしたいと考えています。