つるちゃんからの手紙8月号(令和2年8月号)
 

 新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、学術会議や研修会のほとんどが中止となっております。そこで、今やインターネットを利用した会議がいろいろな分野で行われています。私も、インプラント学の勉強も、東京まで月に一回出かけて行っていたものが、ZOOM(インターネット)に代わりました。東京まで出かけなくとも、最新の医学情報が医院にいながらにして入ってくるのです。移動の時間、労力もかかりません。感染の危険性も皆無です。当初は「こりゃいいや」と思っていましたが、欠点もあります。場の雰囲気は全くつかめませんし、いくら講義がうまい先生でも、自分のパソコンという機械に向かって話をするわけですから、それはとても大変なことだと思うのです。また、終わってからの懇親会がありません。懇親会は第二のセミナー。講師、参加者と交流し本音で話しができます。この学びこそが極めて重要なのです。もはや、今はそれができません。やはり人と人が会って、心を通わせるということがいかに人間にとって大事であることかを気が付かされます。しかし、先日、映像を通してとても良い体験ができたので、お話し致します。

 先日、ブロックスという「映像で日本を元気にする」という理念をもった会社のセミナーをZOOMで受講しました。これはいつも受講している学術系のものではなく、経営者から新入社員まですべてが受講できる、職場のマネージメントにおけるセミナーなのです。今回のタイトルは「社員の幸せを追求する経営とは?」というものでした。全国から40人ほどの参加者がZOOMで活発な意見を交換しました。途中、ある映像が流れました。ある印刷会社の取り組みです。毎月、お誕生日の社員を会議室に集めて、社長が誕生日を迎えたそれぞれの社員にプレゼントを渡してお誕生日会をするのです。その雰囲気がとても和やかで楽しそうなのです。そこには、とてもいい笑顔があふれていました。

 また、その社長さん。新入社員が初めての給与支払い日に全員を会議室に集めます。そこでは、一人ひとりが、「お父さん、お母さん、少し話があるのですが、そこに座ってもらえますか?」「私は社会人になって、今日、初めてお給料をいただきました。これまで育てていただきありがとうございました。これは、そのお給料で買ったものです。受け取ってください。」と、社長と社長の奥様を相手に練習をするのです。練習をするということは本当にそれを新入社員が実行することが前提なのです。これは人として当たり前のことかもしれませんが、いざ、やろうと思っても照れくささなどがあって、ここまできちんとできなかった人も多いのではないでしょうか。実は私もそうです。でもこの会社はそれを社員教育の一環として、社長さん自らが時間を取ってたくさんの新入社員を相手に実践しているのです。それを幹部などにやらせないで、社長さんがご夫婦で、自ら行っていることがすごいのです。

 映像を観ていると、新入社員は照れくささも見せずに、本気でのぞみ、両親の役をしている社長夫婦が目頭にハンカチを当てているのです。練習なのに、泣いているのです。私は驚きと共に感動で胸がいっぱいになりました。うっかり、泣きそうになりました。

 「人を幸せにする経営」というのはこんなことをいうのだと私は思いました。一人ひとりの社員がいて会社は成り立っている。そしてその一人を育ててくれた家族がいる。認め合い、支えあい、感謝して、初めてそこに「幸せ」があるのです。

 きっとこの印刷会社の社員さんはいい仕事をされているのは間違いありません。きっと業績もいいに違いありません。なぜなら、社員の誰もが仲間から、上司から、社長から人として、とても大事にされているからです。人が輝いているのが、映像からもよくわかります。だからこそ、今度は取引先や直接かかわるお客様に対しても大事にできるはずなのです。本気で仕事が打ち込めるということは自分が人として、まず幸せを感じることが一番だと思うのです。恐れがなく、豊かな気持ち、広い心を持つことができる。そして目標となるような上司がいてくれる。社員一人一人がお互いに深い信頼で満ちている。そして仕事への想いが共鳴している。新入社員が入ってきたらみんなで独りぼっちにさせない、目を離さない、そして助けてあげる。どんなセクションでも垣根を越えて支えあう。決して他人事にはしない。そして、少しばかりおせっかい。それが自然にできる組織はとても強いと思います。私もその印刷会社の社長さんのように、覚悟をもって「社員の幸せを追求する経営」に力を入れたいと心に誓いました。