令和3年4月1日　医療法人良陽会　新入社員入社式にて

 

あなたは歯学部や歯科衛生士、歯科技工士専門学校に入学したとき、どこに目標を置いたでしょうか。

おそらく国家試験合格だったのではないでしょうか。昨今は難易度が上がり、在学中はこの国家試験合格にすべての力を注いできたのではないでしょうか。人生の夢を一つ叶えたところですね。これからがいよいよ歯科医療人としてのスタートです。小児歯科、予防歯科、修復、ペリオ、エンド、欠損補綴、義歯、審美、cad/cam、矯正、インプラント、訪問、なんでもメキメキ上達して、早く一人前になりたいと思っています。これからたくさんの時間とエネルギーを投資して、経験を積んでいくことになるでしょう。また、あなたが設定している次の目標は「技術の高いプロフェッショナル」ではないでしょうか。今日はそのプロフェッショナルになるために、大切なことを伝えます。

たとえを言いましょう。たまたま入ったラーメン屋さん。味はまあまあ美味しいのですが、店に入った時に「いらっしゃいませ」もない、カウンターに座ると水のはいったコップをドンとだされ、「何にします？」とぶっきらぼうに訊かれる。服装は不潔でだらしない。物を落とす音や、厨房からは店主らしき人が店員に小言を言っている声が聞こえる。そんな店に、またあなたは行くでしょうか。できたら、清潔なユニフォームを着た店員さんが元気な声と笑顔であいさつしてくれ、店主もニコニコしていて、さらに美味しいラーメンだったら、きっとまたその店にいくのではないでしょうか。実は歯科医院も同じです。全く同じです。

人は居心地の良いところを選びます。選ばれないような歯科医院であれば、それは淘汰される時代です。こういったことは学校教育でも耳にしたことかもしれませんが、それは本当です。患者様が、安心して、笑顔で通うような歯科医院を創るとなると、技術だけでは不十分です。ではどうしたら良いのでしょうか。実は、とてもシンプルなことです。「自分が通うならどんな歯科医院がいいのか」、「家族や友人に自信をもって紹介したくなるかどうか」、「患者様に、どうやったら喜んでいただけるか」、この3つのことを真剣に考えることができる人になってほしいのです。これが原点です。どんな場面であっても、あなたは決してこの気持ちを忘れてはなりません。

そんなこと言ったって、とりあえず技術がないと何もできないとおもっている人もいるかもしれません。気持ちはよくわかります。しかし、それは大きな間違いです。あなたには声を出すことができるし、動くこともできます。元気な挨拶や返事、ゴミを拾うことでもできます。どんな小さなことでも馬鹿にしないで、きちんとやる習慣ができれば、あなたの行動で助かる人がいます。安心できる人がいます。こう思ってください。

今日のあなたの仕事の目的は、一人でいい。たった一人でいいから、あなたを信頼してくれる大切な友人（＝患者様）をつくることです。そして、将来「ここにあなたの歯科医院があって本当によかった。〇〇先生（〇〇さん）に出会えてよかった」と感謝されることを目指してください。これはお金で買えることができない価値です。何事も「心構え」と「思い」がないと本物のプロにはなれません。

これまでは学生でした。両親や周囲の人たちに愛情を注がれて育ててもらったことだと思います。今日から社会人。これからは自分のためだけではなく、人のために世の中のために学んでください。高い地位や認められることを求めるのではなく、人のために動くことをためらわずにやってください。立派な人になるということはそういうことなのです。

卒業おめでとう。国家試験合格おめでとう。就職先に私の医院を選んでくれてありがとう。あなたがこの医院で学び、培ったものが、人や地域や社会、そして立派に歯科医療を担う人になることを心から願っています。

理事長　鶴田博文