つるちゃんからの手紙5月号(令和4年5月号)
私には夢があります。その夢とは夏の北海道の大地をオートバイで走ることです。そのオートバイはアメリカ合衆国のミルウォーキーというところで作られた特別製のもの(CVO)で、排気量は1800ccです。このエンジンの鼓動を聞くと、私のテンションはどんな時にでも上がっていくのです。ハーレーダビッドソンというオートバイです。9年前に私はそのオートバイを手に入れました。
一念発起して、大型自動二輪免許を取得したのが13年前です。39歳の時でした。本当は高校生の時に免許が欲しかったのですが、当時は「オートバイの免許を取らせない」「オートバイに乗せない」「オートバイを買わせない」といった「三ない運動」に加え、「親は子供の要求に負けない」4ない運動というのもあった時代です。乗りたかったオートバイの免許取得をすっかり諦めていました。
しかし、30代半ばで受けたあるセミナーの講師が言いました。「もし、あなたの命があと半年だったとしたら、あなたは何をしますか。また、一円ももらわないでも、やっておかないといけないことは何ですか」と。私はそんなこと考えたことなんてなかったので、すごく困りました。
その時に頭に浮かんだのです。「そうだオートバイに乗ろう」って。高校時代、自転車で仲間と一緒に雲仙に自転車で登った時に後ろから、格好のいいアメリカンのオートバイが私の横から追い抜くときに左手をあげて振ってくれました。その様がとてもカッコよく、追い抜くときの排気音が最高に心地よく、それで私はすっかりハーレーが欲しくなってしまったのです。いつの日か必ず手に入れようと思いました。それから大学に進学し、飛行研究会というサークルに入りました。熱気球を作って北海道バルーンフェスタという大会に参加しました。大会が終わったら、自転車で北海道を旅しました。ユースホステルに泊まりながら、出会う人も多く、それはとても楽しい経験でした。でも私にとってはあの北海道の大地は大きすぎて、広すぎて、とても自転車でのんびりと楽しめるものではありませんでした。「北海道をオートバイで走ってみたい」という気持ちがそこで芽生えたのだと思います。大学を卒業して研修医になって、大学病院で技術を学び、分院長の経験をさせてもらってようやく自分の医院を持つことができました。ただひたすら仕事を頑張って26年が過ぎました。たくさんの歯科医師とスタッフに囲まれてこの大好きな仕事ができるだけでも私は幸せを感じますが、最近自分の仕事以外の夢に興味を持つようになりました。人生のミッションとでもいいますが、夢としてやっておきたい事を真剣に考えるようになったのです。
その大きな原因は自分の老いを自覚した時です。体力には自信があったのですが、老眼がはじまったときはさすがにへこみました。でもある患者様から、「先生いくつになったね」「52歳です」「まだまだ、若いよ。羨ましいよ」と言われました。その一言で目が覚めました。そうだよね、やるなら今だね。私はその夢を実行する日を決めました。2026年の7月7日から2週間、北海道に自分のオートバイで行ってきます。この2週間は自分の大好きなことを存分に楽しめるわけです。準備はもちろん大切です。私がいなくても患者様やスタッフに迷惑が掛からないようにしないといけません。その日が来るまで、勤務医の先生が私と同じレベルでインプラント治療ができるくらいまで育てるつもりです。
門司から小樽までフェリーで丸3日かかります。往復で6日間費やします。オートバイだから雨が降るでしょうし、故障やパンクもすると思います。もちろん途中で腰が痛くなるでしょうし、それ相応の疲れもたまるかもしれません。それまでにある程度の距離を乗って自分のペースを知ることも重要です。もちろん、病気にならないような生活習慣を持つこと。筋トレやストレッチなど行い日頃からの体調管理も必要です。そう考えると、私のわがままのような夢を叶えるのも悪くありません。人生はまさに冒険です。この夢を叶えたときの達成感を考えただけでも私はワクワクしています。
文責 鶴田博文