つるちゃんからの手紙 7月号 (平成30年7月号)
先日、「若手歯科医師対象実習セミナー2018」というセミナーに参加してきました。
このコースは全5回、小倉、熊本、佐賀と、ある程度規模がある歯科医院に行って、それぞれの専門的技術を持ったベテラン歯科医師が各回において、講義実習を行うものです。
九州各地から、意識が高い若手歯科医師が集まり、研鑽します。
私の医院は長崎大学歯学部の協力型臨床研修施設として指定を受けています。
歯学部の卒後臨床教育を行うためには臨床研修指導医講習会というものを修了し指導医にならないと、それを行うことができません。
長崎大学歯学部には8人の指導医がいますが、私の医院には4人の指導医がいます。そうなると、大学から若い歯科医師が私の医院に勉強に来ます。ちょうど、当院で研修を行っている若手歯科医師の先生が受講するので、そのお手伝いをするために参加したのです。
このコースの第一回目は歯周外科手術についての講義実習でした。
重度の歯周病を治療するためには外科手術が必要で、若手歯科医師がそれをいきなり患者様で行う訳にはいきません。一人前になるには、練習用の模型があり、その模型が終わったら次は豚の顎骨で、というようにステップを踏みながら技術をつけていくのです。
四国で開業されている金崎伸幸先生。歯周病治療のスペシャリストです。この講座はかなりアドバンスな内容なので、受講生もシーンと静まりかえって黙々と実習を続けています。
難易度が高いところでは、手が完全にとまり、全く次へ進まなくなります。そんな時に私たちが助けます。あれだけできなかったものが、ベテラン歯科医師が手ほどきすると、あっという間にできるようになるのです。
それはわずかな力の入れ方や、指先の角度で解決することを私たちは経験上、知っているのですが、それは口で伝えることができません。実際に模型上でやってみないと分からないものなのです。
「見るのとやるのは大違い」ということを若い先生は学んでいきます。
今回、たくさんの若い先生の実習のお手伝いをして、思ったことがあります。若手歯科医師の先生はこれまで大学でも実習はあったのですが、それと社会は全く違うということを教える必要があります。人の医療に携わる最前線においては、はっきりと「ダメなものは不合格」と言われます。
学生時代は試験ができないと再試、実習ができないと補講がありました。しかし、社会にはそれがありません。場合によっては叱られ、悔しい思いをします。プロになるということは厳しい基準で社会から見られている、ということを教えてあげることも、ベテラン歯科医の役割ではないかと思いました。
そして、もう一つ大事なことは、「仕事を好きになりなさい」と教えます。仕事に対して「面白い」と思えるくらい研鑽することが大事です。卒業して最初からなんでもうまくできるほど、歯科治療は甘くありません。常に「判断する力」、「鍛錬する力」が必要です。それらをやり切れば、この仕事にやりがいを持つことができるようになるのです。そんなことを若い歯科医師の先生に話をさせていただきました。
すると、主催者から来年度は鶴田歯科医院でインプラントのコースを行ってほしいとリクエストされ、とてもうれしくなりました。若い歯科医師の先生を教える機会を頂いたことに感謝し、良いセミナーを開催できるように、今から私も研鑽していきたいと考えています。若いうちにこそ、技術を身に着けて多くの人の役に立って頂きたいと私は望んでいます。 文責 鶴田博文