虫歯の治療について(成人編)
虫歯の治療について私、鶴田歯科医院の勤務医の山下武延が説明させていただきます。
歯医者さんの治療の中でもっともおおきな割合を占めるのが虫歯治療です。
虫歯(専門用語ではう蝕といいます)は歯周病と並んで歯科医院を受診するきっかけの一つになる病気です。
「虫歯」という言葉を聞くと「冷たいもの(温かいもの)がしみる」、「夜になると歯がズキズキ痛くなる」などのイメージをお持ちだと思います。
突然襲ってくる虫歯の不快感はどうにも我慢がしづらいものですね。
ここでは虫歯に関する5つの疑問に対してお答えしていきたいと思います。
① あなたは虫歯になったことがありますか?
② どうして虫歯になるのでしょうか?
③ 虫歯にならないためには何をすればよいのでしょうか?
④ 削らないでいい虫歯があるってご存知ですか?
そして、最後に⑤虫歯治療の方法について記してみました。
ご一読いただけましたらうれしく思います。
また、このページでわかりにくいことや質問などありましたら、
私、山下までどうぞ御遠慮なくお聞きください。
① あなたは虫歯になったことがありますか?
突然ですが、あなたは虫歯になったことがありますか?
実は「虫歯になったことがない」と答えられる方は非常に少ないことが厚生労働省が6年ごとに行う「歯科疾患実態調査」で明らかになっています。
平成17年度歯科疾患実態調査によれば、20歳以上の年代は実に9割以上の方が虫歯になったことがあるという調査結果が出ています
(下の図は厚生労働省HP平成17年歯科疾患実態調査結果より引用)。

② どうして虫歯になるのでしょうか?
では、どうして虫歯になるのでしょうか?
よく虫歯でイメージされるのが、虫歯菌だと思います。
虫歯の原因となる酸を作り出すのは確かにストレプトコッカスミュータンス(学名Streptococcus mutans)を主とする虫歯菌ですが、虫歯になるにはほかの原因もあるということが分かっています。
それは次の4つの原因です。
a. 細菌
b. 宿主(しゅくしゅ)
c. 糖質
d. 時間
では、ひとつずつみていきましょう。
a.細菌
やはりお口の中に虫歯菌がいないと虫歯にはなりません。
b.宿主
聞きなれない言葉ですが、これは私たち個人個人の虫歯のなりやすさのことを指します。実は個人個人で唾液の量や質が違い、虫歯のなりやすさに違いがあることが知られています。
唾液はお口の中が虫歯菌による酸で酸性になった時に
お口の中をアルカリ性のほうに引き戻す役割があります。
その力は個人個人で違いがあります。
c.糖質
食事やお菓子などに含まれる糖質(スクロース、マルトースなど)は細菌の
栄養源となり酸を作りだすもとになります。
d.時間
これは糖質がお口の中にある時間を指します。
糖質が供給されると虫歯菌が酸を作り出してお口の中を酸性にして
歯を溶かしてしまいます。
糖質をとる回数や糖質がお口の中にある時間が長いと
お口の中が酸性になっている時間が長くなり、結果的に歯が溶けてしまいます。
この関係を図にしたのが下の図になります。
つまり、糖質を摂取すると虫歯菌が酸を産生し歯が溶かされます。
しかし、唾液の作用でpHは中性に戻っていきます。
この中性に戻る時間がかかればかかるほど歯は多く溶けていってしまいます。
①のグラフの下の面積が大きいほど歯はとけていくことになります。
この働きを1日単位で簡単にまとめたのが次の図です。
③ 虫歯にならないためには何をすればよいのでしょうか?
これまで、虫歯は非常に多くの人が患っている疾患であることと虫歯の原因について書いてきましたが、それではどうしたら虫歯にならないのでしょうか?
それは先ほど挙げた虫歯の4つの原因に対して対策を講じていけばよいのです!
また原因別にひとつずつ対策を挙げていきたいと思います。
a.細菌
→実は虫歯菌は生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中には存在していません。虫歯菌は親から子供へと唾液を介して感染することが知られています。
ですから、小さいうちはできる限り虫歯菌の感染を遅らせることが
虫歯予防に有効であることが知られています。
しかし、一旦感染した虫歯菌は残念ながら一生お口の中に棲みつきます。
虫歯菌を0にすることは非常に困難です。
ですが、歯磨きを適切に行うことでその量を減らすことは可能ですので
適切な歯磨きを行うことが虫歯予防につながります。
b.宿主
→歯は個人個人で酸に対する溶けやすさが違うことが知られています。
これは、人によって歯の石灰化度が異なるからです。
石灰化度とは簡単に表すと歯の強さで石灰化度が高いと
溶けにくいということになります。
歯を溶けにくくするにはフッ素を有効に使用していくことが重要である
ことが知られています。
フッ素は歯の表面に働きかけて表面の構造を酸に対して
溶けにくくするように改造してくれます。
最近はフッ素入りの歯磨き粉がほとんどですので活用していきましょう。
先ほど唾液はお口の中のpHを中性に戻す役割があることを書きましたが、
唾液は寝るときには起きている時の半分以下しか分泌されませんので、
寝る前に飲食をするのは控えましょう。
他にも歯並びも虫歯のなりやすさに影響してきます。
歯並びが悪いと汚れがたまりやすくなり虫歯菌の繁殖を招いてしまいます。
矯正治療によって歯並びを改善することも虫歯予防には有効です。
c.糖質
→甘いものが虫歯の原因になることは皆さんよくご存じだと思います。
しかし甘いものを我慢するのはつらいという方も多いのが事実です。
そんなときは砂糖ではなくキシリトールなどの代用甘味料を
使ったものに替えるのがお勧めです。
キシリトールを代表とする代用甘味料は虫歯菌に取り込まれず
酸を産生させにくいので虫歯予防に有効です。
d.時間
→先ほど糖質が口の中に入っている時間が短いほどお口の中が
酸性にならずに歯が溶けにくいことを書きました。
ここで重要なのが糖質が入っているものすべてが
お口の中を酸性にするということです。
つまり、ジュースやスポーツ飲料など糖質が入っているものを口にしたときから
お口の中は酸性になってしまいます。
それを中性に戻すのにはある程度時間がかかりますからその間に歯は溶けていってしまいます。
また、キャンディーなどずっとお口の中に含むものは
その間じゅうお口の中が酸性になってしまいます。
つまり、糖質を口にする回数をできるだけ減らすことと
あまりにも長時間の食事をやめることが虫歯予防に有効です。
④ 削らないでいい虫歯があるってご存知ですか?
これまで虫歯について色々書いてきましたが、皆さんは削らないでいい虫歯があるってご存知ですか?
その虫歯は専門用語ではCO(しーおー)、初期虫歯または
要観察歯と呼んでいます。
COは歯の表面が白くなってその下がわずかにとけている状態の
虫歯のことをいいます。
実は歯は表面からではなくて表面のすぐ下から溶け出すことが分かっています。
このような状態の虫歯は適切なブラッシングとフッ素を使うことによって
元に戻す(再石灰化)ことが可能です。
ただ漫然と歯磨きを行うだけでは虫歯になってしまうことも多いので、
ぜひ歯科医院に来ていただき適切な処置や生活習慣のチェックを
うけていただいて健康な歯を取り戻していただきたいと思います。
⑤虫歯治療の方法 (成人)
次は残念ながら虫歯になってしまった歯の治療について
ご説明していきたいと思います。
まず虫歯は進行状態から4つに区分され、それぞれ治療法が異なります。
C1(エナメル質う蝕)
虫歯菌によって、歯の表面のエナメル質という部分まで進行した状態の虫歯です。
(症状)痛みなどはありません。
歯の変色やザラつきがあります。
(治療)この時期の虫歯は削ってレジンという白い樹脂で詰めます(レジン充填)。
(治療期間)治療は概ね1回で終わります。
C2(象牙質う蝕)
虫歯菌によってエナメル質の下の象牙質という部分まで
進行した状態の虫歯です。
(症状)冷たいものがしみる、かむと違和感がある、ときどき鋭い痛みがあるなどの症状があります。
(治療)虫歯の大きさによって治療法が異なります。
神経は保存できることが多いのですが、虫歯の大きさによっては
保存できないこともあります。
虫歯が比較的小さい場合はレジン充填を行います。
虫歯が大きい場合は金属(12%パラジウムまたはゴールド)または
ハイブリッドセラミックによる詰め物を行います(インレー)。
さらに虫歯が大きい場合またはレジン、インレーでは治療が難しい部位の場合は
クラウン(冠)をかぶせる治療を行う場合もあります。
(治療期間)レジン充填は1回
インレー・クラウンは2回の通院が必要です。
C3(歯の神経にまで達したう蝕)
虫歯菌によって歯の神経のある歯髄にまで虫歯が進行している状態です。
(症状)多くの場合何もしなくてもズキズキとした強い痛みがあります。
歯医者さんへ行こうと決心される方が多いのが虫歯がこの状態まで
進行したときです。
(治療)神経まで虫歯菌が侵入しているので、最初に神経をとる治療(抜髄)が
必要となります。
そのあとに歯の根っこ(歯根)にいる虫歯菌の消毒と掃除を行います(根管治療)。
歯根がきれいになったあとで冠をかぶせる土台の形づくりと型取りを行います(支台築造)。
最後に土台をつけて冠をかぶせられるように形づくりと型取りを行って冠をかぶせます(クラウン)。
(治療期間)大体1歯当たり1~2ヶ月近く治療期間がかかります。
また歯の根っこの状態が悪い場合にはさらに治療期間がかかることもあります。
C4(歯が崩壊し根っこだけの状態となったう蝕)
虫歯菌によって歯が溶かされ根っこだけの状態となった虫歯です。
(症状)すでに歯髄が死んでいる場合には痛みを感じません。
しかし、虫歯菌により歯根の先が感染を起こし膿がたまり、痛みを伴うこともあります(根尖性歯周炎)。
(治療)多くの場合、歯の保存は困難です。抜歯になることが多いです。
歯が保存可能な場合は根っこの消毒・掃除を行います(感染根管治療)。
根管治療がうまくいけば土台をかぶせて冠をかぶせます。
(支台築造・クラウン)
(治療期間)感染根管治療の場合は歯根から膿が出なくなるなど症状の
改善がみられるまでは個人差が大きく一概にどれくらい治療期間が
かかるかはその歯の状態次第です。
<最後に・・・・>
ここまでご覧になって頂きありがとうございます。
虫歯治療について説明して参りましたが、改めて強調しておきたいのが
歯は痛みが出たらかなりの割合で虫歯は大きく進行しており、
神経を取らざるをえないことが多いということです。
神経を取ってしまうと歯の寿命は20年程度短くなってしまうことが知られています。
私たちは出来るだけ神経をとることなく、
あなたの歯を長持ちさせたいと考えています。
そのためには痛みなどの症状が出る前の段階で虫歯の
早期発見・早期治療が必要になってきます。
歯を健康に保つためにも、定期的な来院をお勧めいたします。

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