つるちゃんからの手紙7月号(令和6年7月号)
 

病院に行くと「○○学会出席のため休診にします」という張り紙を待合室で見る事があると思います。
学会とは学術会議のことです。お医者さんだけではなく、歯医者さんにもたくさんの学会があります。

6月8日、9日と日本顎咬合学会第42回学術大会・総会に出席してきました。私の医院からは勤務医が2人、歯科技工士と歯科衛生士それぞれ一人ずつ出席してきました。場所は東京の東京国際フォーラムと言って東京駅と有楽町駅の間にそびえる大きな会議場です。初日は海外から講師を迎え同時通訳付きのセッションがありました。飛行機の関係で少し遅れたらもう会場は座る場所をやっと確保できるくらいの盛況ぶりでした。大きな学術大会になると演題も多く、分科会が同時に開催され、2週間前に送られてくるプログラムを熟読し、自分が聴きたい講演やシンポジウム・テーブルクリニックを探すのです。この時間がたまらなくワクワクするのです。

またランチョンセミナーと言って、お弁当を食べながら講演を聴きくのです。隣で肩を寄せ合い、もぐもぐしながらセミナーを聴講するのもまた楽しいものです。毎回私は欲張りなので、参加したいセッションが見きれないほど多くいつも消化不良に終わるのです。

 今時「インターネットで必要な情報は入ってくるのでは?」と思った方もいるかもしれません。確かにインターネットが普及し始めたころは「すごい論文がこんなに簡単に読めるようになった」「こんな統計、無料で手に入るなんて」と驚いたものです。しかし、逆にだれでも、どんな情報でも、勝手にあげることができるので、インターネットだけを頼るのは極めて危険なのです。もし、私がやった治療がインターネットで調べたどこの誰が発信したのかわからない、ジャンク情報をうっかり信じてしまい、その医学知識や歯科技術を使用しているとしたら、あなたはどう思うでしょうか。

 うまくいけばいいけれど、そういかなかった場合、すべての責任は私にかかってくるのです。最も質が高い最新の情報や知識、技術を欲するのであれば、その学問の権威や各分野の研究者から直接話を聴くことが求められるのです。ですから、診療制限をして、飛行機に乗り、宿泊してまで学会に行くのです。

もちろんその学会の中で議論されている情報にもいろいろな考えがあり、その考えを選択するのも自分です。

今この技術は必要なのか、まだ早いのか。それとも、もっと踏み込んで学ぶ必要があるのか。この診療機器や歯科材料は今、必要なのか、いらないのか。全体の流れを読み、これから歯科界はどう変わっていくのか、これからどんな時代になるのかを判断していく糧になるのです。

 もう何年も学会に通っていると、会場ではたくさんの人と会います。恩師や後輩、過去に参加したセミナーで知り合った先生など。

大きな学術大会になると沖縄から北海道まで。なかでも同級生が一番多いです。久しぶりに会っていろんな話に花が咲きます。
そのまま新橋まで飲みに行くこともあります。大体医院を休みにしてまで学会に参加する人は例外なく一流に近い技術を持った歯科医師ばかりです。そういった人と出会うだけでもモチベーションがグンと上がります。

私の父は「学会=飲み会」と誤解していたようで、「おさんな(あなたは)学会ってゆうても酒飲みにいきよっとやろうが。このふうけもんが」と言われたこともありますが、学術会議は良い医療を実現する最強の方法であることは間違いありません。知識は力であり技術は質であること。それはいつに時代になっても不変なのです。