つるちゃんからの手紙6月号(令和5年6月号)
 

私の尊敬する人に大久保寛司さんという人がいます。あるセミナーでの話です。20代後半の男性が離婚を決意した人の話です。離婚の理由は、奥さんが朝出勤するまえに「いってらっしゃい」と言ってくれないというものでした。まあ、それだけではないでしょうが、そういうことが積もりに積もって、離婚を決意したということです。その男性は離婚届を市役所に取りに行き準備をして奥さんに訊いたのです。「なぜ、いってらっしゃいと言ってくれなかったのか」と。さあ、その時奥さんはなんと答えたでしょうか。それぞれのグループで話合ってみてください、と大久保さんは言いました。私のグループからはいろんな答えがでました。「ご主人が嫌いになったから」「愛情が冷めたから」「奥さんは浮気していたのでは」「子供はいたのかなあ、できなかったから」「行ってらっしゃいと言わなくてもわかっていると思っていたから」話し合った後、大久保さんが答えを言いました。

それはあなたが、「いってきます」と言わなかったから。

あなたの職場ではどうでしょうか。毎朝、あなたは出勤したら、「おはようございます」と元気に目をみて相手に言っていますか。ぶっきらぼうに挨拶する、目をみないで相槌だけ。すると相手は、どうして、なぜ、なにか私悪い事をしていないだろうか、この人は私のことが嫌いなのかもしれない、と不安になってしまいます。そしてこれが積もり積もると、人間関係が悪化します。

そうすると、周りの誰かが困っていてもパソコンとにらめっこ。見て見ぬふりをするようになるのです。結局誰かが辞めるまでこの関係は続くというものです。

また、部下が挨拶してくれないのです。態度がわるいのです。そう相談する人がいます。果たして、その部下は新入社員の時からそうだったのでしょうか。入社時の面接からそうだったのでしょうか。

違います。部下のやる気がなくなるのは、上司が彼らへの態度が悪かったからです。小さなことと思っていると、その不安が不満にかわり、そうなっていくのです。

はじめにお話しした夫婦のケースですが、翌朝から「いってきます」というと奥様は「いってらっしゃい」というようになり、時間はかかりましたが良い夫婦関係に戻ったということです。つまり、ほんの一言のコミュニケーションを怠ったばかりに夫婦関係ですら亀裂がはいるのですから、職場ではなおさらです。私の歯科医院では相手に気持ちよく歯科医療を受けていただくことに力を入れています。だから、どんな人にも感じが良い挨拶をすることにしています。また、健康でないと良い挨拶はできません。朝礼の時は全員が健康チェックを行っています。簡単です。出勤点呼の時ただ、右手を挙げて「ハイ、元気です」と笑顔で大きな声で返事をする。これはもう15年以上続けていますが、いつもスタッフ一人ひとりが、こんなにいい声で患者様に挨拶をしていると思うと、朝からとても良いスタートをきることができます。すると一日が充実したものになります。挨拶は些細なことではありません。とても大切なものです。本当に心のこもった良い仕事ができるようになるにはチームワークが重要。上司がいい手本を示してあげれば、それでいいのです。