つるちゃんからの手紙10月号(令和5年10月号)
突然ですが、「飴ちゃんあげる」って言われたことありますか?
小さいころ、近所のおばさんからよくそう言って飴をもらっていました。そのおばさんのバッグの中には小袋に分けられたきれいな飴玉がたくさん入っていました。会うたびに飴をくれる、そのおばさんが大好きでした。
飴玉をいつもバッグに入れている人、どちらかというと年配の女性に多いような気がします。それには訳があります。年齢を重ねていくと潤沢だった唾液も出にくくなります。これは、唾液腺という唾液を出す組織が少しずつ加齢によって萎縮していくことがあるからなのです。唾液がでにくくなると口は渇きやすくなりますので、飴を舐める事で、その刺激で口の中が潤うのです。私も最近どういうわけか口がよく乾くようになってきたのは、やはり加齢が原因かもしれません。私の場合は飴ではなく、お茶で口の中の渇きを防止していますが、緊張が続く仕事(手術や大きな咬合治療)が続くと口は極度に渇きます。運動していないのに汗もかきます。仕事が終わって家に帰ると、ビールを飲みたくなるのもそのせいかもしれません。
話は戻りますが飴を携帯していて、それをいつでもなめているというのは、実は困った習慣なのです。なんといっても虫歯になりやすい!
いつも医院で定期健診を受けている人でも、急に虫歯ができている。それもちゃんときれいに磨いているのに。歯肉だって引き締まっている。でもここ数カ月で虫歯が「歯の歯の間」(コンタクトポイント)や、歯肉と歯の境目(歯頚ライン)や、歯肉が下がって露出した歯の根(根面う蝕)にできている。それも一か所ではなく複数の箇所に。
そんなふうに目を疑う事もあります。そんなときに、最近、食習慣が変わったかどうか質問すると、口が渇くようになったからという理由で、飴を携帯するようになったという人が少なくありません。あるいは、糖尿病になって低血糖を防ぐ為に常に飴を携帯している人もいます。また、夏場になるとスポーツドリンク(500ccで角砂糖5~8個)をがぶ飲みしたり、中学生になってクラブの帰りに買い食いが多くなったりと、生活習慣の変化が歯の性質を変えてしますのです。
虫歯になるには虫歯菌(S.mutans)の活動性が増した時です。この虫歯菌は糖を栄養源にして生きています。だから飴を舐めるという事は虫歯菌に餌を与えていることになります。さらに口の中は温かいので繁殖にはもってこい。まさに、そこは虫歯菌の理想郷!たくさんの糖をたべまくって、酸をこれでもかと出し続けていきます。その酸が歯の表面にあるエナメル質を溶かしていくのです。そして虫歯が多発的にできていくのです。歯を磨いているから、定期健診に行っているからと決して安心はできないのです。話は変わりますが、唾液ってとても重要なんです。唾液は汚らしい、臭いと思っている人もいますが、唾液は口の中が酸に傾いたら中和する(唾液緩衝能)カルシウムを運んできて、溶けかかった歯の表面のエナメル質を修復してくれる(再石灰化)のです。じゃあ、口が渇いたらどうしたらいいのか。
そんなときは、砂糖が入った飴でなく、砂糖不使用のガムを嚙むことを強くお勧めします。噛むと唾液がよく出ます。もちろん歯の修復に役立つ成分が入ったガムが販売されています。私がおすすめできるのは、江崎グリコのPOsーCa F(ポスカF)。これは歯にカルシウムを速やかに届けるリン酸化オリゴ糖カルシウムを配合しているガムで、幼児から大人まで幅広くお勧めできます。大阪歯科大学の実験では小学生が一年間、給食の後このPos-Caを摂取したところ、口腔内の酸性化を抑制し、初期う蝕の改善効果を実証しているのです。また、唾液緩衝能の改善を認めることができる唯一のガムです。さらに虫歯予防に効果的なフッ素まで配合されています。みなさんご存じのキシリトールがさらに進化したものと思っていただけたらいいと思います。私たちはこれを「第3世代ガム」といって、お口が渇くという人にお勧めしています。お口が渇きやすいという人には是非試して頂けたらと思います。