つるちゃんからの手紙 令和8年4月号

2026.04.08


ずいぶん前の話ですが、4月に新卒の新入社員を3名迎えました。「そんなに人を入れて大丈夫なのか?ちゃんとお給料を払っていけるのか」と父親から言われました。「そんなのわからんよ」と私。その当時はまだ経営のこともわからず、ただがむしゃらに働くだけでした。

医院経営してみてわかったことは、スタッフ1人の月給30万円だとしたら、社会保険料や所得税を引かれるので手取は25万円。「自分は医院から25万円の給料をもらっている」と考えるのが一般的です。でも実際は大きく異なっています。社会保険料の半額は医院から、交通費、福利厚生費、研修費、飲食費など直接スタッフが恩恵を含めると軽く2倍は越えてしまいます。そのお金はどこからでているのか。それは患者様からいただく診療報酬なのです。それ以外はありません。つまり給料の2倍の60万円を捻出するにはどれだけの仕事をしたらよいのでしょうか。経費と呼ばれるもの、例えば金属代、外注技工料、歯科材料費、歯科機器のリース代や地代、医院の建物の返済、運送費、修理費、事務用品費など含めるととんでもない金額となるので、恐ろしくて口にだすことなどはできません。

それでも、なぜお給料を支払うことができるのかというとそれはすでに育った先輩らが一生懸命仕事をして新入社員の分まで賄う事ができるからなのです。

私の医院は医療法人といって会社と同じようなものなのですが、そういった組織に属さずに、学校を出てすぐに、なにもかも1人でやって、そこまでのお金を稼ぎだすことはとても困難だと思います。また、ある程度経験があって、起業したとしても、一人分の給料でいいのだから売り上げは60万円上げればいいのだろうと思っているかもしれません。しかし、これまで当然のように支給されていた交通費(例えば定期券やガソリン代)やボールペン一個においても全て自腹などのです。聞くところによると、コンサルタントや代理店などを1人でやって十分な収入でやっていけるのは10人に1人といいます。ここまで話せば、自分の月給は「当然の稼ぎ」として威張って受け取れる性質のものではないことに気が付きます。

新入社員のうちはまだ医院からの恩恵がほとんどであり、お給料分の仕事をするとなると少なくとも5年ほどかかるわけなのです。今日も朝食をとって、自動車で出勤し、ユニフォームがあって、帰って寝るところがあれば、それは今までの自分の環境をひとつひとつ思い出し、これまで自分を支えてくれた人、一緒にいる人に心から心から感謝をすることができると思うのです。だから、一度ここで働くと決めたら簡単にあきらめないで欲しいと常々おもっています。新入社員は「将来一人前になれるだろうか」と、不安で心が一杯でしょうが、あれこれ目移りをせず、自分ができること(たとえば掃除ひとつでも)に集中して、全力を出し切りましょう。それを毎日続けていると天から素晴らしいギフトをもらうことができます。それは「自信」です。たったひとつでもなにか仕事ができるようになった時に感じる達成感は、お金で買う事ができないほど尊いものなのです。今できないことが多く、先輩みたいにうまく動くことができずに、悔しくてひそかに涙を流してもいいと思います。トイレはそのためにあってもいいと思っています(笑)。でもね、いつか必ず、かならず、心の底からうまいと思えるメシを食べましょう。その日が来ることを私は待っています。

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