つるちゃんからの手紙 令和7年9月号

2025.09.06


8月末になると私の住む地域では「奉納浮立」(ほうのうふりゅう)があります。

豊年祭といって秋の収穫前に神社の境内や、地区を回りながら浮立を多くの人の前で披露するのです。

鐘、小太鼓、大太鼓、笛、銭太鼓という踊りで構成されており、400年も続いている伝統行事です。小学校が夏休みに入ると浮立の練習が始まります。

家のすぐ近くの公民館の広場から浮立の音色が聞こえてくると、いてもたってもいられなくなります。一日の診療が終わり、少しぐらい疲れていても体が勝手に反応するのです。条件反射ともいうのでしょうか。体の奥にある何かが目を覚まし「行かなきゃ」と発作的に笛を持って公民館の広場に直行します。(ちなみに私のパートは笛)小学生、中学生までやってましたから、音色は体に染みついており、どんなことがあっても忘れないものになっています。

全体の構成はそれぞれの曲があり、順番も決まっています。「道浮立」「おまち」「ひょうこばち」「返し」「まくり」となっており、特に最後の「まくり」はテンポが驚くほど速くなり、太鼓の音響や銭太鼓の動きの華やかさで、観る人はその迫力に圧巻されます。まるでロックミュージシャンのライブのラストナンバーのようなのです。

学生のころと、卒業してこちらへ帰ってくるまでの期間はやっていませんでしたが自分の子供たちが小学校に通うようになってからというもの、再びその輪に再び加わることができました。それからは16年、夏の1か月半の間だけですが、ずっと続けています。

お盆近くになると帰省してきた人が顔をだします。「あら、久しぶりね、今どこにいるの」とみんなが声をかけます。「太鼓の音がしたから立ち寄った」、「懐かしい」、「まだ続いていて感動した」、と口にします。

そして「ずいぶん子供たちの数が少なくなったね」とも言われます。それは少子化だから仕方がないのかもれません。でも子供たちが少なくなっても浮立が好きな人たちが自然に公民館に集まります。ここ5年くらいは浮立に参加する人たちの数はそう減ってはおらず、転勤などで、この地域の外から移り住んできた小学生の親が浮立の楽しさに魅せられ、子供たちと一緒に太鼓を打ったり、笛を習い始めたりしています。中には部活のマネージャーのように練習の後にちょっとした夕食をつくってくれる人などもおられます。これはとても嬉しいことで、学校以外にも地域の和やコミュニケーションが生まれます。

運営はどうしているのかというと、これも不思議なことにうまくいっているのです。まず、子供たちは習っているにもかかわらず月謝や会費などはありません。練習が終わると子供会からがんばったね、と小さなアイスキャンディーがふるまわれます。私も子供の頃はこれが嬉しくて毎回参加していました。楽しい練習の後のアイスの味は格別でした。

厳しい稽古があるわけでもなく、だれもが大人の真似をして自然に型が身についてくるのです。夏の終わりの「奉納浮立」では、相当うまくなっていて、地区を回ると見物に来た人たちがつぎつぎと「御花」(おんはな)といって、ご祝儀をいただきます。そのご祝儀でこの行事の運営がなりたってしまうようなのです。

奉納浮立が終わると公民館に集まり、大人も子供もささやかな打ち上げをするのですが、これがまたとても楽しい。あそこでバチを落としたとか、間違えちゃったとか笑いながら話をします。ここだけは誰もが純粋に「浮立が好き」という気持ちだけでつながっていると私は思うのです。

私の笛の腕前はというとまだまだで、親分についての修行中ですが、こういった文化や伝統は大事にしていきたいと考えていますし、このようなものが自分の住む地域にあって本当にラッキーだったと思っています。

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